僕はいまアメリカの会社に勤めていて、本社から来た外国人が多数を占める管理部門に在籍しています。一方、現場は日本人のチーム。ただでさえぶつかりがちな管理部門−現場の衝突が、文化の差が火に油を注ぐ形で結構激しいことになっています。

その衝突が問題視されてか、日本人も外国人も異文化交流についての研修を受けさせられます。

これがストレス。

なぜストレスになるかというと、研修で教わる日本人観が間違っているから。異文化交流をテーマに研修をする会社は、国ごとの考え方の傾向を類型化します。そして、日本人の傾向は日本人が決めています。

クールジャパンを本気で展開したことからも分かる通り、日本人は日本人への評価が甘い傾向にあります。親切で丁寧で慎重。目上の人を尊重するから時に決断が遅くなったり、大胆な変化ができない時がありますよ。もう少し積極的に直接的にコミュニケーションをしましょうね。これが異文化交流研修で語られる典型的なアドバイスです。

ウソです。

僕の経験上、イギリス人の方が親切で丁寧だし、インド人の方がデータを使って慎重に物事判断をします。上司に気を遣うのは、いつ上司にクビにされるか分からないアメリカ人が世界一でしょう。だから一般的に言われるこれらの日本人の特質は正しくありません。

日本人の本質は「変化を嫌う」ことです。

親切で丁寧なのは自分と同じ考え方を持っている人に対してのみ。違う考えに対しては寛容になれません。慎重に判断をするのは現状を変えたくないから。何かを変えようとする時には必要以上に詳細なデータを求めてその案件を潰しに行きますが、現状維持は安易に決定します。上司が新しいことを始めたり部署を改革しようとすれば激しく抵抗します。根底にあるのは現状を変えたくないという気持ちです。

このように書くと悪いことだらけのようですが必ずしもそうではありません。現状を是とし、プロセスを改善して行くことで進歩できる環境下では無類の強さを発揮します。同じ作業を繰り返しながら小さな改善をコツコツと積み重ねることは日本人だけができること。製造業で世界一になれたのはこう言う日本人の性質があったからに他なりません。

歴史もその日本人の特質を示しています。自分で改革を行なったのは織田信長くらいで、多くは模倣と改善で成り立っています。豊臣秀吉は信長の改革を模倣し、徳川家康はそれを退化させ、封建制に立ち返ることで江戸時代は260年も平和に続きました。坂本龍馬は幕府の完全な解体を望んではいなかったし、明治維新はヨーロッパの制度を輸入・改善することで進みました。日本の自動車メーカーがアメリカを模倣し、一気に超えていったのは周知の事実です。模倣と改善でオリジナルを超える。これが日本人の特質なのかもしれません。

この模倣と改善の特質は、変化の速い現在においては強みと言われなくなりました。一人ひとりが起業家精神を持ち、革新を起こしていこう。そう言うメッセージを受け取り続ける中でで、日本人は自分たちは改革もできるのだと信じたくなり、自分たちの「変化を嫌う」性質を認めなくなりました。そして異文化コミュニケーションの苦労はコミュニケーションスタイルの違いにあると自分たちを納得させようとしています。

実際は、コミュニケーションスタイルの違いは大した問題ではありません。文化の違いはみんなわかっているので、コミュニケーションのすれ違いにはみんな寛容です。本当に問題なのは、日本人が「変化をしたくない」という意志を無自覚とは言え隠していることです。だから他の文化の人たちから見ると本音が見えず「何を考えているか分からない」と思われてしまいます。

みんなもっと正直に自分のスタンスを示せば良いのです。僕はいまの組織で自分が「変化」を起こす人間ではないと認めています。その上で、他人の「変化」のアイデアを隙の無いものにし、確実に実現するために自分の力を使っています。周りの外国人はアイデアを具現化するスピードと確実性を評価してくれています。つまり、僕は模倣と改善の能力が評価されていると言うこと。それも組織に必要な要素だとしんじているので、変化に弱い自分に後ろめたい気持ちを持たなくて済んでいます。

自分の得手不得手を理解し、どうやって組織に価値をもたらすか?を的確に判断すること。それが異文化コミュニケーションの最重要ポイントです。コミュニケーションスキルや役に立つ英語フレーズはまったく必要ありません。

異文化コミュニケーションに苦労している人は、自分の本質を理解し、それを使って組織へ貢献する方法を考えてみてください。きっと解決への近道になると思います。