前職ではアナリスト兼営業として、データ分析とそれを説明するミーティングを商品として売っていました。データを見ながらお客さんの考え方が市場の動きと合っているか?今後のビジネスチャンスとリスクはどこにあるのか?お客さんの上層部への報告内容をどうするのか?などを一緒に考え、報告することで料金をもらっていました。

データを分析して市場動向を客観的に理解することはお客さんのビジネスにとってプラスになります。でも、絶対に必要なものではありません。データがなくても市場動向を捉えることはできるし、世の中に完璧なデータは存在しないので僕の分析が間違っていることもあるからです。だから、お客さんにとっては僕は「良い相談相手」、あったら助かるけど無くても困らないまさに不要不急の商品でした。

不要不急の商品を売るのは難しい作業です。必要ないものだから新規のお客さんに話を聞いてもらうことがまず難しいし、お金を出してもらうとなるとさらにハードルが上がります。

お客さんにとって役に立つ「良い相談相手」であることを証明するために僕は対面の営業に頼っていました。電話をかけてなんとか会ってもらう。会う時は、きちんとした身なりで訪問をし、相手が好む言葉遣いで相手の役に立つデータや分析を示し、売り込みは一切しない。それを繰り返すことで相手に「この人から買いたい」と思わせて販売につなげるのが僕の営業スタイルでした。スーツや靴、鞄に投資した金額も、お客さんに会いに行く回数も普通の営業マンよりもかなり多かったと思います。セールスサイクルは最低でも6ヶ月と長め。それだけお金と手間と時間をかけて自分を売り込まなければ売ることが難しい商品だったと言うことです。(値段が異常に高かったと言うこともありますが…。)

在宅勤務が増えたCOVID以降はこのやり方が通用しなくなりました。電話会議をするには理由が必要なので「ちょっとお話を」「近くに行くので」と言う理由で新規顧客に会うことが難しくなる。身なりや言葉遣いを整えても、対面でのミーティングほど良い印象を与えられないので、自分を売り込む前に商品に目が行きすぎてしまう。商品に注目するのが早すぎると、それだけを見て不要不急と判断され売れなくなる。今の環境で営業を続けていたら、どんなに工夫をしても売り上げは落ちていたと思います。

環境に応じた営業スタイルに変えれば良いと言れてしまいそうですが、それは必需品だからできる話。必需品ならどうせ買うものなので営業マンの話を聞いてもらえますが、不要不急の商品の話なんて本来は聞きたくないものです。その壁を営業マン個人の魅力で越えていたのがこれまでの営業。COVIDによってそれができない時代になったと言うことです。

これからは、これまでの日本的営業スタイルと共に、不要不急の商品までも淘汰されていくのかもしれません。生き残るのがどんどん難しい時代になっている気がします。