2020年1月12日。夕食を食べようと外に出たところ、いつもは人でごった返している街が静かです。

 

この日は総統選挙の日。とは言え投票にはそんなに時間がかからないはず。それなのに街はなぜ空いているのか?

 

みんな投票のために故郷に帰っているから。

 

台湾では投票を登録された住所で行うのですが、これが簡単に変えられないのだそうです。例えば台南出身のAさんが、台北で就職して住んだとします。台北の家は賃貸、両親は台南で健在。この場合、Aさんの住所は台南から動かせません。少なくとも台北で家を買わない限りこの住所は動かせない。

 

だから、Aさんは投票のために新幹線で台南まで帰らなければいけません。台北にはたくさん地方から出てきた人がいます。その人たちがみんな投票のために故郷に帰ったので1月12日の台北は静かだったようです。

 

時間もかかるしお金もかかる。我々日本人から見ると理解できない制度です。でも、もっと理解できないのはそんな制度なのに投票率が70%を超えたと言う事実。多くの人が投票のために故郷に帰っているということです。政治への参加意識が桁違い。

 

そもそも、この制度自体、投票意識の高さが背景となって作られているようです。日本の住民票のように簡単に変えられたら投票したい人がいる地域に住所を移す人が続出するから、登録住所の変更を簡単には認めないんだそうです。

 

さらに、家を買ってその場所に登録住所を変更しても、そこで投票する権利が認められるのは1年後。つまり投票するために家を買う人を警戒していると言うことです。そのくらい台湾の人は政治への参加意識が高いということです。

 

背景には台湾の政治的な不安定さがあります。オランダ・日本・中国に支配された歴史があり、現在も中国と難しい関係にあることが、政治に自分たちの意見を反映させなければならないという意識を高めているようです。それだけ台湾が難しい立場に置かれているということで、手放しに賞賛はできないのかもしれませんが、国民の意思が反映される政治と言うのは正しい民主主義の姿だと感じます。

 

かたや日本は現住所の近所で投票できる制度。それなのに投票率は40%とかそんなレベル。認めたくないけど、政治がおかしくなっているのは怠惰な国民の責任と言わざるを得ません。政治家の質が低いのも、政策が一部の層に著しく有利になっているのも、憲法を理解する能力のない首相が憲法改正をしようとしちゃうのもすべて自分たちの責任。

 

自戒の念も込めてやっぱり投票は行くべきだと思います。いまは投票したい人がいないなら、現職・与党を落とすために投票したらよい。そういう揺らぎが政治の質を上げて行くはずだから。