俺たちがそれなりに順風満帆に生きてこれたのはただのラッキーなんだよ。高度成長に乗っただけなんだから。お前たちの世代の方がずっと生きるのが大変だと思うよ。

わが父(以後、じいさんと呼びます)は高校卒業とともに上京し、同じ会社で47年間勤め上げた技術屋です。培った技術を使って70を過ぎた今でも仕事をしており、息子の僕から見ても頑張って働いて来た人だと思います。そのじいさんが自分の人生を振り返ってこう言いました。

人生はこうあるべきと言う価値観がたくさんあります。

  • 仕事を続けなければならない。
  • 年をとったら収入は上がらないといけない。
  • 働きながらスキルを得て、社会人として成長しなければならない。
  • 結婚をして子供を育て上げなければならない。
  • 親の面倒を見なければならない。  などなど

ここに挙げた価値観、じいさんはすべて実現しています。もちろん努力をして実現をしたのですが、高度経済成長期と言う時代背景があったから実現できた部分もあると思います。いまの時代にこの価値観を押し付けられても実現は難しい。

  • 仕事を続けたくても会社が元気なままいてくれるとは限らない。
  • 収入が上がるかどうかは会社の業績によるし、この時代に安定した業績を上げ続ける会社はまれ。だから収入は不安定になるし、転職などで下がることだってある。
  • スキルは上げられる。でも社会人人生を通じて同じ職種に就き続けることなんてまれなので、継続したスキルアップは難しい。
  • 収入が上がらなければ共働きになる。そうすると結婚ってなんだ?子育てはできるのか?と言うことになる。
  • 自分が生きていくのに精いっぱいなのに、親の面倒なんて見られるのか?と思う。

日本の経済状況・雇用形態は大きく変わりました。それによって高度経済成長期の価値観を実現するのは難しくなりました。だとしたら、価値観も一緒に変わらなければならない。そうでなければ価値観と現実のギャップが人を苦しめることになってしまいます。

  • 仕事を続けたいけど続けられない。自分はダメなんじゃないか?
  • 一生懸命働いているけど収入が上がらない。自分はダメなんじゃないか?
  • 社会人として成長している気がしない。自分はダメなんじゃないか?
  • 結婚できない。子供を育てる自信が持てない。自分はダメなんじゃないか?
  • 親の面倒を見るのが難しそうだ。自分はダメなんじゃないか?

ダメなのは自分じゃない。時代に合わない価値観の方なのに、そうならないこの国の雰囲気は

俺たちはできたんだ。

と言う老人たちの妄想が一因だと思います。でもね、それはあなたたちが高度経済成長期に生きていたから。誤解を恐れずに言えば、あなたたちの時代ならほとんどの人ができたことなんです。

ただのラッキーなんだよ。

そんなラッキーから生まれた価値観に縛られる必要はない。じいさんの言葉にはそんな意味合いが含まれていたんだと思います。僕たちは僕たちなりの価値観を持って自分の人生を一生懸命生きて行けばよい。そんな助言をくれたのかもしれません。

そんなじいさん

お前の人生だから好きにしていいけどさぁ。もう結婚もできないだろうけどさぁ。孫はかわいいんだよ。嫁は諦めていいからどっかで子供だけ作れないもんかね?

とビール片手に言ってました。彼なりに高度経済成長期の価値観を捨てたようです。